手術2日前
手術予定日2日前。
《ソロモンよ私は帰ってきた》心の中でそうつぶやく。
別に覚悟ができていた訳ではないが、何となく手術を受けるんだな、程度でまるで他人事のような気分だった。
占い鑑定士の“いい日”が手術の予定日だったことも安心材料ではあったのかもしれない。
しかし、重ねて言うが私はそこまで占いを信じている訳ではない。
正しいかどうかは知らないが、占いとはいわゆる統計学の一種だという認識で確率論的な一種の学問だと思っているので、当たる確率は高いのかもしれないが、すべての人に当てはまるような代物ではないと思っている。
が、だからこそ“当たる確率”は高いのかもしれない。ただし、占いに依存するようになると危険だ。とはいうものの、占い鑑定士に言われるままに手術の日程を決めている私の言葉では説得力に欠けるか・・・・。だって、聞いてしまうとやっぱり気になるじゃないですか?(笑)
手術前日
手術に向けて前日に検査を行い、迎える当日・・・
とはいかなかった。
今度は「炎症を示す数値が高く今回の手術はリスクを冒せないので延期したい」と。
この時点でやっと今回の手術の詳細が明らかになる。
- 全身麻酔をかける
- 胸を切って胸骨を開いて意図的に骨折した状態にする
- 大動脈を人工血管に置換する手術なので出血を最小限に抑えるため心臓は止める
- その間全身の各器官に血液を送る必要があるので人工心肺を使う
- 場合によっては大動脈弁を人工弁にとりかえる
- 脳に血液の塊や大動脈の欠片が流れ込み脳梗塞になるリスクを低くするために脳を25℃以下に冷やす
- この手術での死亡確率は10%程
- 手術自体は成功しても後で脳梗塞や人工透析など後遺症が残る可能性はある
- 輸血は30人分以上を用意している
これを聞いて一切不安を感じないという人は少ないのではないか。
実際、看護師さんたちに「手術怖くないですか?」と何度か聞かれた。
《心臓を止めて脳も25℃以下にして、ってそれ半分死んでないか?》と思わなくもなかったが、やらなくても済むならやりたくないが、先生から
「やらなければ近いうちに死ぬので手術はした方がいいです」
といわれると、やる意外に選択肢がない。
しかし私が一番驚かされたのはそんなことよりも私の血液型がAだという事実。母親からO型だと聞かされ、そう信じてきた。別にAだろうがOだろうが変わりはないのだが、何故か今回の一連の入院の中で一番ショックだった。この事実を母親に問いただすと「私はO型って聞いたけどねぇ。血液型って途中で変わることもあるのね」とのこと。そんなわけないが、やっぱり私はこの人の子であることは間違いないと思った。
手術日延期
そして3度目となる手術の予定日を決めることになるが、そのときすでに年度末…
国立の大学病院であったため主治医の先生が異動、手術直前に主治医が替わるという事態。
そんなことがあるのか!とビックリした。
しかし、結果的にはこの変更は私にとっては幸運となる。
かつて手術の日程を決めた先生が主治医だったのだが、この先生が最初に担ぎ込まれ入院した病院の主治医の先生と同級生で密に連絡をとりあっているという。
おかげで情報の共有も容易で転院の手続きも煩わしさは一切なかった。
世はゴールデンウィークが10連休になると騒いでいるそのさなか、大学病院も例外ではなく10連休となる。
5.5センチメートルを超える私の大動脈瘤が耐えられるか不安だった4月中旬、主治医の先生は「大丈夫でしょう」とのこと。
ここで、またもや我らが占い鑑定士
「手術するなら4月25、26、27日のどれか。」
と。
それがダメなら?とたずねると
「仕方ないので5月6、7、8、9日」
とのお告げ。
その助言をもとに4月中の手術の日程を聞いてみると、4月中は他の患者さんで詰まっているため無理だという大学病院の答えで、手術はゴールデンウィーク明けと決まる。
二度目の転院
時代は平成から令和に変わろうとしていた。
ここでまた大学病院特有のシステムが発動。
手術がゴールデンウィーク明けになるため、その間退院してもらいたいと。
そして、最初の病院へ二度目の転院。
若干手術でナイーブになっており、タライマワシにあっている感じが否めないことも手伝ってちょっとうんざりした。
ちなみに今回は妹の車で普通に転院。これまでにも転院するたび、その他ことあるごとに妹の世話になっており引け目を感じた。持つべきものはしっかり者の身内です。
今回もまた次の手術予定日まで血圧に気を付けながらおとなしく過ごして・・・・とはいかなかった。
転院して1日目に
今までこれといって大動脈関連で痛みを感じなかった私だが、今回初めて若干胸が痛くなった。
正直たいした痛みではなかったが、一応主治医の先生に言ってみる。
これまでも大動脈とは関係なさそうな
「点滴が漏れて腕が痛い」
とか
「なぜかわからないが脇が痛い」
と訴えたことはあったが、そのたびに
「なんででしょうねぇ」
とあまり先生や看護師さんに相手にされなかったことはあったが。
今回はさすがに大動脈関連の痛みということでレントゲンとCTを撮ることに。
結果、最初に担ぎ込まれた病院が把握している瘤よりも大きくなっており、心臓に何か液体が少し漏れて固まっているが今すぐ悪さをする感じではないだろうとのこと。
私が
「血ですか?」
と聞くと先生からは
「血だったらもう死んでます」
と言われた。
それでも念のために大学病院への緊急転院をすすめられ、転院の準備をするが、大学病院からの回答は「NO」であった。
ベッドが確保できないらしい。
しかし、ここで主治医同士が同級生だったことが幸いする。
どうしても緊急転院させた方がいいというゴリ押しが通る。
そしてこのゴリ押しが私にとっては幸運となる。
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